さいきん見た映画『赤と黒』『パルムの僧院』

 ジェラール・フィリップのご尊顔を拝する一週間であった。

赤と黒』 "Le Rouge et le noir" クロード・オータン・ララ(Claude Autant-Lara)監督、12/22(火)銀座テアトルシネマにて、19:30の回

 スタンダールの小説を原作とした映画でインターミッションもつく3時間超という長編。王政復古下に平民の男がのしあがろうとしつつ廻りの女に手を出して不幸に陥るというそんな感じの話。
 今見て映画としておもしろいかというとちょっと怪しい。検索してみたが英語版Wikipediaフランス語版の扱いもそっけない。
 主人公ジュリヤン・ソレルの内面の葛藤を全部セリフで説明しちゃったり、「おまえらブルジョワはおれがのしあがろうとするのが憎いのだ!」みたいなこと言ってるわりにそんな社会問題を描くような作品だという印象もなかったりで、時代ロマンを期待していったために微妙にずっこけた。これだけ長いのにほぼ全編がスタジオ撮影というのも窮屈に感じる。
 では退屈なのかというと、それほどでもない。出てくる女性たちが主人公にめろめろになってしまうのだが、そういうのは他の作品で見ると「バカじゃねーの」となるんだけど、この映画の場合主演のジェラール・フィリップさんがかっこよすぎるのでこんな男が屋敷の中をうろうろしてればそりゃ女も惚れるよねと納得してしまう。なので終始そのジェラール・フィリップが黒服で颯爽と歩き回るのを鑑賞する映画と考えればこれはとても素晴らしい作品である。

パルムの僧院クロード・オータン・ララ(Claude Autant-Lara)監督、12/24(木)銀座テアトルシネマにて、15:40の回

 『赤と黒』がカラーであるのにたいしてこちらはモノクロだが全編ロケ撮影なこともあってか、こっちのほうが映画的迫力に満ちている。大公はじめとした人物たちのキャラがたっているし、風景も美しい。ラストの暴動も迫力がある。
 一方であいかわらずこの主人公はなんなんだという感じで、女に手を出して牢屋に入れられ、また女のために町に舞い戻って拘束され、とそんなんばかりである。ええかげんおまえ吊されよ、と思ったり。誇り高き自由主義者や、いさぎよく身を引こうとする男たち、ゆかいな侯爵さまやこすっからい警視総監たちに比べるといまひとつ魅力が足りない。主人公がワーテルローでどんな目にあったかよくわからんので、そこが納得できているとよいのかもしれないが。でもそこはそれ、ジェラール・フィリップさんがかっこいいのでそりゃ女たちもクラクラするよなというところで納得できてしまう。やっぱりかっこいいってことはすべての問題を片付けてしまう。
 いつまでも僧院が出てこないのでなんなんだと思ってたら最後に出てきた。なんじゃそりゃ。

余談

 いや、しかし客がほんとに婆さんしかいなかった。ビスコンティの『山猫』を新宿で見たときは中年のご婦人も多かったのだが、今回はほんとに婆さんばかり。たまに爺さんがいる、という感じ。ジェラール・フィリップのリアルタイム世代なんだろうか。